「えっ、ドアを作れって?」
夕方になってお父さんが帰って来たからね、僕はさっそくドアを作ってって頼んだんだ。
でもね、お父さんはなんでか知らないけど、ぽかんってお顔をしてるんだよ。
「えっと、朝出かけるまではどのドアも壊れていなかったと思うのだが、俺が森に行っている間に何かあったのか?」
「ちがうよ! ドアを治すんじゃなくって、作ってって言ってるじゃないか!」
僕、ちゃんとドアを作ってって言ったよね?
なのにお父さん、お家の中にあるドアが壊れたの? なんて聞いてくるんだもん。
だから僕、両手を上げて怒りながら、直すんじゃなくって作るんだよって教えてあげたんだ。
「ルディーン。それだけじゃ、流石にハンスも解らないわよ」
でもね、そんな僕にお母さんは、どこのドアを作るのかを話さないとダメよって。
そっか、そう言えばどこのドアを作るのか、言ってなかったっけ。
「あのね、お父さん。僕、お醤油を搾る道具を作ったんだ。だからね、石の壁につけるドアを作って」
「あ〜、ちょっと待て、ルディーン。その醤油ってのは何だ? それに搾る道具って」
もう! 僕、何でドアを作るのか、ちゃんと教えてあげたよね?
それなのに何でお醤油のお話になっちゃうかな。
「お醤油のお話はいいの。今はドアのお話をしてるんだからね!」
「いや、確かにそうなんだろうが……おい、シーラ。ルディーンはどこにつけるドアの話をしているんだ?」
僕が一生懸命教えてあげたのに、何でか知らないけどお父さんはよく解ってないみたいなんだよ。
だからお母さんに、どこのドアを作るの? って、
「ふふふっ、ルディーンもさっき言ったじゃないの。しょうゆを搾る道具を入れる場所のドアよ」
「搾る道具を入れる場所? そんなもの、うちにあったか?」
「今朝までは無かったわね」
お母さんはね、今日お家の中であったことをお父さんに教えてあげたんだよ。
そしたらそれを聞いたお父さんがとりあえず見に行ってみるかってお庭に出てっちゃったもんだから、僕とお母さんはその後ろから付いてったんだ。
お父さんはお庭に出るとね、ぐるって周りを見渡したんだよ。
でね、隅っこに置いてある石の入れもんを見つけると、それに近づいてってコンコンって軽くたたいたんだ。
「なるほど。ルディーンが言っていたのは、この石の塊の事か」
「塊じゃないよ。中にお醤油を搾る道具が入ってるもん」
さっきお醤油を搾る道具が入ってる入れもんだよって教えてあげたばっかりなのに、お父さんはそれを見て石の塊なんて言うんだもん。
だから僕、違うよって言ったんだ。
そしたらお父さんはごめんごめんって言って、もういっぺん目の前の石の入れもんを調べ始めたんだ。
「う〜ん、どこにも継ぎ目が無いから、よく見ても石の塊にしか見えないな」
「でもこれ、ルディーンの言う通り薄い石の壁でできた入れ物なのよ」
「魔法っていうのは凄いんだな」
お父さんはね、よーく見てもやっぱり石の塊にしか見えないんだって。
でもお母さんがほんとだよって言ったもんだから、僕にすごいねって。
「あのね、僕、石の入れもんは作れるけどドアは作れないんだ。だからね、お父さん。この入れもんのドアを作って」
「ああ、解った。明日は今日取ってきた獲物のから剥いだ皮の下処理とかがあるから、明後日ならいいぞ」
「ほんと? やったぁ!」
獲ってきた魔物、お肉とかを分ける解体は今日中にやっちゃうんだけど、まだ帰ってきてないお兄ちゃんやレーア姉ちゃんの獲ってくるのもあるだろうから皮の下処理まではできないでしょ?
だから明日はそれをやんないとダメだから、この入れもんのドアは明後日作ってあげるよって言ってくれたんだ。
僕、それを聞いてすっごくうれしくなっちゃって、両手を上げながらぴょんぴょん飛び跳ねてたんだよ?
そしたらね、そんな僕にお父さんが真剣なお顔でこんな事を聞いてきたんだ。
「ところで、ルディーン。この中に入っているのは搾る道具なんだな?」
「うん、そうだよ」
「って事はだ、酒も搾れるんだよな? なら今度、森の果物で酒を……」
お父さんはね、お醤油が搾れるんだったらお酒も搾れるのかなぁって思ったみたい。
だから僕に、森で採れる果物でお酒を造ってって言おうとしたんだけど、
「ハンス!」
横で聞いてたお母さんがすっごく怖いお顔で怒ったもんだから、すぐにしょんぼりしちゃったんだ。
ディック兄ちゃんたちやレーアお姉ちゃんが帰って来たから、獲ってきた獲物をみんなで解体作業。
それが終わったもんだから、みんなで晩御飯を食べたんだよ。
でもさ、僕たちはぐちゃぐちゃお肉を挟んだパンを食べちゃったでしょ?
だからあんまりお腹に入んなかったんだ。
「あら、キャリーナもルディーンも、今日はあんまり食べないのね」
そんな僕たちを見たレーア姉ちゃんが何かあったの? って聞いてきたんだよね。
「あのね、今日ルディーンが作ってたおしょうゆってのがちょこっとだけできたから、ブラックボアのお肉をぐちゃぐちゃにしてから焼いたのにつけて、それを葉っぱのお野菜といっしょにパンではさんだのを食べたんだよ」
「へぇ。美味しかった?」
「うん。すっごくおいしかった!」
キャリーナ姉ちゃんがすっごく嬉しそうに美味しかったって言ったもんだから、レーア姉ちゃんもにっこり笑ってよかったねって。
でもね、
「またルディーンとキャリーナだけで美味しいものを食べたのか。ずるいぞ!」
それを聞いたディック兄ちゃんが怒り出しちゃったんだよね。
でもさ、ぐちゃぐちゃお肉サンドを食べたのは僕とキャリーナ姉ちゃんだけじゃないでしょ?
だからそんなディック兄ちゃんに、お母さんが私も一緒に食べたわよって。
「ええっ、お母さんも食べたの? じゃあ、俺たちのはなんでないのさ?」
「さっき、キャリーナも言っていたでしょ? しょうゆってのを搾り始めたから、最初に出て来た少しだけを取って味見をしたのよ」
お醤油、今日搾り始めたばっかりだから全部おあるまでにはまだ時間がかかるよね。
それに搾り終わってからも脂が浮いてきたり搾りかすが沈んだりするのを待って、それから火入れをしないと完成しないもん。
今日のはね、キャリーナ姉ちゃんが早く食べたいって言ったもんだから、ちょびっとだけ取って味見しただけでしょ?
だからみんなの分までは無いんだよって、お母さんはディック兄ちゃんに教えてあげたんだ。
「味見するのなら、俺たちの分も一緒に取ってくれればよかったのに! ルディーン。そのしょうゆってのはどこにあるんだ?」
「お庭の隅っこに置いてある石の入れもんの中だよ」
僕が答えると、ディック兄ちゃんは不思議なお顔になって聞いてきたんだよ。
「石の中? そんなの、どうやって取り出すんだよ」
「あのね、明後日お父さんがその石の入れもんにつけるドアを作ってくれるんだって」
今はドアがついてないけど、お父さんが作ってくれたら煎るデモ空けられるようになるでしょ?
だからその後だったらいつでも取り出せるよって、僕はシック兄ちゃんに教えてあげたんだ。
「明後日かぁ。すぐには食べられないのか? 石の入れ物って事はルディーンが魔法で作ったって事だろうから、壊す事もできるんだろ?」
「ダメだよ。だってもうお日様が沈んじゃったから、もし壊れちゃったら新しく作れないもん。それに何度も開けたら、ほこりとかがお醤油に入っちゃうじゃないか!」
僕がダメって言っても、ディック兄ちゃんはあきらめきれないみたい。
「お父さん、扉を作るの、明日じゃダメなの?」
「皮の処理は早めにしない土地や肉片が乾いて固まってしまうからな、明日はその作業だ」
だからドアを明日作れないの? って聞いたんだけど、皮の下処理をしないとダメだよって言われてしょんぼり。
「そんなに早く食べたいなら、お前が明日木枠とドアを作ればいいじゃないか」
「でも俺、そういう作業は……」
ディック兄ちゃん、狩りは上手だけど木を切ったりするの、へたっぴだからなぁ。
お父さんに作ればいいじゃないかって言われて、やっとあきらめる気になったみたい。
「お母さん。扉がついたらそのしょうゆってのをつけて焼いた肉、絶対晩ご飯に出してよ」
「ええ、解ってるわよ。黙って聞いてはいたけど、きっとテオドルやレーアも食べたいと思っているでしょうからね」
お母さんはそう言うとね、家族みんなに楽しみにしててねって言いながらにっこり笑ったんだ。
読んで頂いてありがとうございます。
ディック兄ちゃんは食いしん坊なのに、なぜかルディーン君の作った新しい料理やお菓子を一番に食べられたことがありません。
ですが、今までは自分にも食べさせてという事はあったけど、今回のようにわがままを言った事は無かったんですよね。。
でも今回は今までの甘いものと違って肉料理だったからか、ちょっと無理を言ってしまいました。
いつもは聞き分けのいい、いいお兄ちゃんなんですけどね。
さて今週も引き続き出張が続きます。
なので金曜日の更新はお休みさせていただくのですが、どうやら予定よりも少しだけ早くこの出張が終わりそうなんですよ。
最初は12月の終わりまで続くかと思われたのですが、うまくすると2週目で終わりそうです。
まぁ、それは宿泊の出張が終わるというだけで、日帰り出張はあるようなんですけどね(苦笑
それでも金曜日の休載は今週と来週で終わって、12月の3週目からはいつも通り週2回更新に戻れそうです。
ただ先ほども書いた通り、今週金曜日の更新をお休みするのは変わりませんけどね。
と言う訳で、次回更新は月曜日となります。